ペットシッターとして開業するには、動物取扱責任者として3つの要件のうち2つを満たすことが必要です。
- 半年以上の実務経験がある。
- 営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術について一年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業している。
- 所定の資格等を取得している。(公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術を習得していることの証明を得ていること)
②の条件達成のために動物系の専門学校に通うと、①の条件である実務経験を積み始めることができるのは学校卒業後の1〜2年後。ペットシッターの開業が3年以上先になってしまいます。
①ペット業界で規定の実務経験を積み、③所定の資格を取得するのが最短で開業する方法です。
この記事では、開業要件の一つ目である実務経験をペットショップで積むことについて解説します。
実務経験の種別は保管か販売
ペットシッターは、第一種動物取扱業の種別で保管にあたります。
実務経験として保管業であるペットシッター、ペットホテル、トリミングサロンなどで、働く必要があります。
実務経験の期間は、正社員(常勤勤務)なら半年以上、パートやアルバイトでの勤務なら1年以上です。
ペットシッターでの実務経験はおすすめしない
私は最初、ペットシッターの求人を探しました。【地域名+ペットシッター】で検索。ペットシッターのアルバイト求人を見つけました。ペットシッターのアルバイトは、資格や経験の有無は問わず、時間的に融通が効くことや前職の経歴が面白がられて即採用となりました。
しかし、採用の際の雇用誓約書に「辞めてから1年以内に同じ地域でペットシッターとしての開業はしない」という約束が書かれていました。
同地域で同じ職種を始めることは、顧客やノウハウを盗られてしまうことになりかねません。心情的には、実務経験証明書をライバルになるシッターに発行してくれるかどうかも分かりません。
最短で開業を目指すのなら、ペットシッターとしての実務経験はおすすめできません。
未経験者はトリミングサロンやペットホテルで働くのは難しい
求人サイトをチェックして、未経験でも雇ってくれるところを探しましたが、動物業界未経験の状態で働けるペットホテルやトリミングサロンはありませんでした。
特にトリミングサロンでは、求められているのは即戦力。
求人の条件として以下のようなスキルが挙げられていました。
- 3年以上の職務経験があること
- 一人で一頭シャンプーからカットまで仕上げられること
- 動物専門学校卒業程度の技術力をもっていること
保管業での開業は、販売業の実務経験でもOK
管轄の動物愛護センターに問い合わせたところ、保管業で開業する場合、販売業の実務経験でも認められることがわかりました。
販売業であるペットショップの求人を見てみると、未経験でもOKと記載されていました。
ペットショップでの仕事内容は
- ペット用品の販売・接客
- ペット用品の発注、納品、在庫管理
- 子犬子猫の健康管理
この仕事の中で多くの時間を要するのが、犬猫のお世話です。
一日2回の給餌、犬舎と猫舎の清掃、ご飯を食べない子の強制給餌、ブラッシング、爪切り、足裏バリカンに耳掃除など、店舗に在籍する生体がいる限り365日行います。
ペットシッターになるには、様々な犬種、猫種のお世話に慣れておく必要があります。その点、ペットショップでの実務経験は有効だと考えました。
また、シッティング中にグルーミングなどのケアができれば、飼い主さんにも喜ばれるのではないかと思いました。
ペットショップは保管業でもある
ペットショップで勤めてから分かったことですが、ペットショップは動物取扱業の種別で保管と販売の両方に当たります。
販売後(契約後)の子犬や子猫を、飼い主さんが自宅にお迎えするまでの数日間、ペットショップでお預かりすることがあります。その場合、お客様のワンちゃん、ネコちゃんを保管していることになるのです。
ペットショップで働くことができる人
ペット業界未経験者が実務経験を積むには、ペットショップで働くのが最適です。
ペットショップで働くことができる人は、
- 体力がある人
- 土日、祝日、年末年始、お盆なども働くことができる人
- 接客(生体販売・契約・保険販売)ができる人
体力がある人
子犬の場合、排泄の回数が多く、何度も犬舎やケージの清掃をしなくてはいけません。
子犬や子猫といっても体重や大きさは様々です。大型犬の子犬は4ヶ月で10kg以上になる子もいます。ブラッシングや強制給餌など、犬猫のお世話はかなりの肉体労働です。
ペットショップのレイアウトによっては、犬舎や猫舎が広く、ガラス張りになっている店舗があります。お客様に子犬、子猫が過ごす様子を見てもらうのに、おしっこやウンチを放置しておくわけにはいきません。ペットショップスタッフは、犬猫のお世話をしながら、頻繁に床やガラスの掃除をします。膝や腰に痛みや不安がある方にはおすすめできません。
土日、祝日、年末年始、お盆なども働くことができる。
ペットショップは、慢性的な人手不足です。接客ができ、土日祝日や年末年始なども含めて、週に3日以上働くことができれば即採用になると思います。少なくとも私の働いているペットショップで働き始めるのは簡単です。
しかし、犬や猫のお世話が好きな人にとって、ペットショップで働き続けること自体が心情的に難しく、長く働くことができずにすぐに辞めてしまう人もいます。
生体販売に対して多くの反対意見もありますが、私にとってはペットショップのバックヤードで子犬や子猫がどのように過ごしているのかを知ることは大きな経験になりました。
接客(生体販売・契約・保険販売)ができる。
ペット用品を多く取り扱う店舗では、物販の売上が多いですが、多くの店舗の売上のメインは生体販売です。
ペットショップで働くということは、子犬子猫の健康管理を行い、その子犬子猫を販売し、お客様と販売契約を結ばなくてはいけません。
動物の販売時、ペットショップ側は、お世話の仕方や想定される病気や必要なワクチンについての説明する義務があります。ペットショップ独自の安心パックや生命補償についてお客様に分かるように説明するのも、販売契約のときです。
ペットショップでお迎えした子犬子猫は、帰宅後にすぐに体調を崩す子も多くいるため、お迎え時にペット保険への加入を薦めます。
お客様に保険を薦めるには、保険業の基礎知識を習得して試験に合格し、保険販売員になる必要があります。
常勤勤務や社員になることは難しい
最短でペットシッターとして開業するには、常勤スタッフや正社員になることです。
しかし、ペットショップでは、すぐに常勤スタッフや正社員になることは難しい仕組みになっています。
なぜなら生体販売で、販売頭数の目標を達成できたスタッフが、常勤スタッフ、正社員になれる方針だからです。
未経験でペットショップで勤め始めたスタッフが、すぐに販売頭数の目標を達成することは容易ではありません。少なくとも私の場合は、うまくいきませんでした。
まとめ
これは、あくまで私が働いているペットショップの話ですが、全国展開している大手のペットショップで働いているので参考になる方も多いと思います。
ペットショップは、動物取扱業の種別が販売と保管であり、慢性的な人手不足なため、未経験者でも働き始めるのは簡単です。
ペットショップで働き続けることができる人は、体力があり、販売契約やペット保険について説明ができ、土日祝日お盆や年末年始でも働ける人です。
また、販売目標頭数を達成できれば、正社員や常勤スタッフになれるため、実務経験の期間を1年未満に短縮できるかもしれません。
未経験でペットシッターとして開業を目指している方は、まずは求人の出ているペットショップがないか是非調べてみてくださいね。